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2025.10.13

『レッド・ツェッペリン:ビカミング』大ヒット記念【今さら人に聞けないアルバムレビュー第4回~「レッド・ツェッペリンIII」問題作から名作へ!大いなる転換点~

ロックバンドにとって、3枚目のアルバムはしばしば「問題作」と呼ばれます。
初期衝動をぶつけたファースト、その勢いを洗練させたセカンドを経て、バンドに余裕が生まれたとき、彼らは新しい表現への挑戦を試みるからです。
1970年にリリースされたレッド・ツェッペリンのサード・アルバム、その名も『レッド・ツェッペリン III』も大いなる問題作とされました。

▼帯がない!どこにやってしまったんだろう。
Img_1389


■予想外の「静けさ」に面食らう
後追い世代である僕がツェッペリンを聴き始めた頃、まず手にしたのは、「天国への階段 (Stairway to Heaven)」、「ブラック・ドッグ (Black Dog)」の入った名盤「Ⅳ」、「胸いっぱいの愛を (Whole Lotta Love)」が聴ける「Ⅱ」あたりでした。

それらを一通り聴き終えて『III』を聴いた第一印象は「あれ?こんなに静かな曲が多いの?」でした。
ブルースをベースにした重厚なハードロックを聞かせてくれたツェッペリンに、僕が期待したのは、さらなる轟音と迫力でした。
しかし、この『III』は、その期待を少なからず裏切るものでした。

1曲目こそハードな「移民の歌」ですが、アルバムのほとんどは、スコットランドの田舎でメンバーが合宿生活を送る中で生まれた、アコースティックな楽曲が中心だったのです。
マンドリンやアコースティックギターを多用し、トラッド・ミュージックやフォークの要素を取り入れた静謐でメロウなサウンドは、当時のファンや批評家からも「地味だ」「ツェッペリンらしくない」といった、賛否両論を巻き起こしたそうです。

■『レッド・ツェッペリンIV』への静かなる布石
しかし、時を経てこの『III』は、ツェッペリンの音楽的多様性を証明した重要作として再評価されています。
このアルバムで彼らが深めたアコースティックな表現や、大胆なリズムチェンジへの試みは、次のモンスターアルバムへと決定的に繋がります。
そう、続く4枚目のアルバム『レッド・ツェッペリン IV』です。

『IV』の代名詞とも言える「天国への階段」は、静かなアコースティックから始まり、徐々に盛り上がり、最後はハードロックで終わるという、ツェッペリンのすべてを凝縮した構成を持っています。
この曲の前半で聴かせる静けさや深みは、『III』で彼らがアコースティックな表現力を徹底的に磨いたからこそ到達できた境地です。
静けさと激しさ、ツェッペリンの2つの顔がスタイリッシュに整理され、再融合された結果、彼らの音楽はもはやハードロックというジャンルの枠に収まらない、唯一無二の存在として確立されました。

▼ジャケットのフチをクルクル回すと窓からのぞく絵が変わる。なんちゅう凝った作り。
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『III』、それは、ツェッペリンが単なる「すごいハードロックバンド」から「ロックのすべてを体現するバンド」へと進化するための、避けて通れない実験場だったのです。
そのような背景を知って聴けば、このアルバムの持つ「静かなる傑作」としての魅力がより深く心に響くはずです。

というわけで今回は、バンドが「コンセプトをキープする」という安全策を捨て、新しいことに挑戦したゆえの問題作『レッド・ツェッペリン III』をレビューしました。
果たして第5回はあるのでしょうか?!




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