『レッド・ツェッペリン:ビカミング』大ヒット記念【今さら人に聞けないアルバムレビュー第1回】~『プレゼンス』極限状態で生み出された「魂の記録」~
レッド・ツェッペリンで一番好きなアルバムは人生その時々によって変わりますが、一応おっさんと呼べる歳になった今現在で最も好きなアルバムは?と聞かれれば『プレゼンス』と答えるでしょう。
▼高校生の時に買ったアナログ盤(たぶん再販版)。残念ながらカビが生えてます。

レッド・ツェッペリンが1976年発表した7枚目のアルバム『プレゼンス(Presence)』は、彼らが武骨なハードロックに立ち返った作品で、バンドの最もピュアで、最も生々しい姿が刻み込まれています。
■装飾を削ぎ落とした緊張感
このアルバムは、バンドが直面していた困難な状況(ロバート・プラントの自動車事故による負傷など)の中、ツアーが中止となり、活動休止を余儀なくされた時期に制作されたという背景があります。
レコーディングは18日間という短期間で集中的に行われたため、キーボードなどの装飾を一切排し、メンバーそれぞれが自我を極限までむき出しにして、純粋な4ピースの音だけを叩きつけています。
■圧巻のオープニング曲と、ペイジの「危うさ」
アルバムの白眉は、10分を超えるオープニングトラック「アキレス最後の戦い (Achilles Last Stand)」です。
ジョン・ボーナムの疾走感溢れるドラムと、ジミー・ペイジの多重録音による「ギター・オーケストレーション」が、聴く者をねじ伏せるような圧倒的な「存在感(Presence)」を放っています。
しかし、この「アキレス最後の戦い」の凄まじいテンションは、追い詰められた制作状況が生んだ危うさも内包しています。
特に中盤のギター・ソロには、緻密な計算と同時にコントロールを失いかねないほどの衝動が同居しており、極限状態で作品を完成させようとするペイジの焦燥感や執念が透けて見えるようです。
このわずかな「いびつさ」こそが、完璧な演奏を超えた生々しいドラマを聴き手に感じさせます。
■ソリッドなロックへの回帰
「アキレス最後の戦い」以外にも、ブルースの古典を引用した人気曲「俺の罪 (Nobody's Fault But Mine)」、ジョン・ポール・ジョーンズのベースが唸るファンク要素を取り入れた「キャンディ・ストア・ロック (Candy Store Rock)」などを収録。
そして、アルバムの最後を締めくくるのは、ロバート・プラントの孤独な心情を歌ったスロー・ブルース「一人でお茶を (Tea for One)」で、ツェッペリンのルーツであるブルースを基礎としたロックへの深い回帰を見せています。
『プレゼンス』は、知名度では他のアルバムに及ばないかもしれませんが、バンドが危機的状況の中で、自身の根源的なサウンドと向き合い、魂を削って生み出した真のロックの記録として、今なお根強い支持を集める傑作だと思います。
ということで第1回は『プレゼンス(Presence)』でした。
果たして第2回はあるのでしょうか・・・?
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